はじめに

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2014年12月6日土曜日

かけまくもかしこき

センスも無ければゲイも無いカネも無ければトリイも無い
活かす殺すは神頼み

先月号のお話と小噺にかかわることをご披露いたします。
「狂歌明日か」は学生時代の寮仲間で作っているメーリングリストにも投稿しています。そこで若干のやり取りがありました。
11月号の「ハラハラ」のお話の中で団扇と観劇で大臣を辞めたお二人の事を書きました。これに関して見事にやられてしまいました。相手はDさんです。Dさんの曰く「ウチワで大臣をヤメルって、センスがないからですかねえ、観劇で大臣ヤメルって、芸がないからでしょうかねえ
やられました。私は直ちに白旗を掲げました。Dさんに乾杯、私は完敗です。
見事な切返し、恐れ入ります。団扇で扇子、観劇で芸。見事な発想です。扇子も持たず芸もなく、これでは噺は務まりません。お後が宜しいようで・・・」
その後に未練たらしく「実は今月号の小噺・少子高齢化対策は判らないという人がいないかと期待しているのですが、無理でしょうか」と付け加えました。
私としては小噺には若干のひねりを入れ、何%かの人が判らないというのを理想としています。人間がひねくれているのです。Dさんから返信がありました。
イザナミには高齢化対策として、老人を毎日1000人目標で絞め殺させるって、これってホラー小噺なんですな、怖い!。これで判ったことになるでしょうか?
・・・フヌ!・・もしかしてDさんも直前まで判らなかったのか?!それにしても、少なくともメンバー内ではこのやり取りで判ってない人がいたとしても「ハハーン!」となってしまう。出来れば少しの時間でも、一人でも悶々とさせたい。一縷の希望を持って、Dさんに連絡しました。
「 私としては、落語「青菜」の植木屋さんの心境です。「鞍馬より牛若丸が出でまして、その名を九郎判官・義経・」「・・弁慶にしておけ」です」
さすがはDさん。「弁慶にしておく」ことでやり取りを終息させました。このやり取りの後、私としては若干の収穫を得たのです。
Kさんからメールがありました。
お二人の話を横から拝聴していて、段々訳が分からなくなってきました。どうか幼稚な私(達)のため、解説など出来ませんでしょうか?それとも、こんなもの解説したら、噛み終わったするめのようになるのでしょうか?
噛み終わったするめ・・」と言われたら返事は「アタリメーよ」とするのが推奨されるでしょう。他人が創った小噺が判らないと言われれば、及ばずながらとしゃしゃり出ますが、自分が創ったものの解説を自らするのは、面映ゆくていけません。しかしながら、折角のKさんのお申し出ですから、・・やりますか・・・。俺は判ったという方は、少し眼をつぶっていて下さい。
黄泉の国から逃れ出たイザナキに対して、イザナミが「あなたの国の人を一日千人縊り殺す」と言いました。イザナキが「それなら、私は一日千五百の産屋を立てる」と反発、宣言したことを小噺「少子高齢化対策」では踏まえています。神代の昔から、国が栄えるには民と富が増えることとされてきました。我、日の下の今日の繁栄は、この二神の生滅差によってもたらされたと言えます。困ったことに、このところ、この二神の能力が衰え、千五百の産屋を建てることができなくなり、少子化を招き、千人を縊り殺せなくなって、高齢化が進んでしまったのです。政府の少子化対策というのは、なんとか出産数を増やそうとするところです。イザナキ神に力を持ってもらい、千五百の産屋を建てる施策が必要であります。一方、高齢化は人が長生きすることから生じます。早いところ黄泉の世界へ送ればいいのです。少子高齢化対策などと一緒にまとめて角が立たない政治的言い回しをしていますが、本来少子化と高齢化は全く別のものです。少子化は生まれてくる子供が少なすぎ、高齢化は長生きしている輩が多すぎるのです。高齢化対策はイザナミ神に頑張ってもらって、予定通り千人を縊ってもらうことです。その対策、手立てを講じるのが、政府の施策となる訳です。千五百の子作りをする。千人を縊り殺す。そう言ってしまうとネタ割れするので、二神が宣言した千五百と千という数字のみを使っておきました。
「イザナキ様には少子化対策、イザナミ様には高齢化対策に資することを期待している次第です」と別々のものであることを宣言しています。噺の力点はイザナミ神の縊りによる高齢化防止対策です。よろしいでしょうか。Dさんの言う「ホラー小噺」です。
判らない人がいてくれるかと期待していた私としては、Dさんの「ホラー小噺」で、すっかりネタ割れしてしまうと泡を食ってしまった訳です。そこで「青菜」を持ち出して話を進めました。
落語「青菜」は春風亭柳橋が得意とした噺です。酒をごちそうになった植木屋に旦那が「菜をおあがりか」と勧めます。奥方に菜をもってこさせようとしたところ、食べてしまって無い。それを奥方が「旦那様、鞍馬山から牛若丸が出でまして、その名を九郎判官・」・・その菜を食らう・・菜を食ってしまった・・と言い、旦那がこれを受けて「では義経にしておけ」・・よしておけ・・、というやり取りです。そのやり取りが格好いいと感心した植木屋が、家に帰ってカミさんを口説いて一丁真似しようと言う訳です。ところが植木屋のカミさんは「・・・その名を九郎判官義経」と「義経」まで言ってしまいます。返答に窮した植木屋が「じゃあ、弁慶にしておけ」というのがオチになっています。自分のセリフをしゃべられてしまった植木屋は、すっかりうろたえてしまうのです。これを使って、Dさんにネタばらしは困ると伝えたつもりです。Dさんは了解して、話を終わらせることとなりました。これは落語「青菜」を知っていないと何だか判りません。「青菜」の奥方は「鞍馬山から・・」を使って菜が無いことを伝え、私は「青菜」を使ってネタばらしを伝えたつもりです。
落語「青菜」はお話しとしては、中身があるものではありません。語り口で聴かせるものと思います。柳橋の語り口が耳に残っています。今では小三次がやっています。面白いのですが、「青菜」のやり取り、オチについては今一つ納得感がありません。かねてから私としての改善提案を持っていました。恥ずかしながら、ここで披露させていただきます。
かみさんに「鞍馬山から牛若丸が出でまして、その名を九郎判官義経」と「義経」まで言ってしまわれた植木屋さん、「弁慶しておけ」としてオチとなります。
どうも「弁慶にしておけ」が単に「義経」つながりだけでいけません。ここは植木屋さんに「フヌ・ヌ・・・」と絶句してもらいます。カミさんがたたみかけて「その名を九郎判官義経」と言います。これを何度か繰り返し、次第に声が大きくなったところで、植木屋が「ウルせい!静かにしろ!」・・ハイお後が宜しいようで。

少し長く、くど過ぎたきらいはありますが、ここまでがマクラと思ってください。本番の小噺は先月に引き続き「少子高齢化対策」がらみです。

少子高齢化対策の効果

高齢化による力の衰えが著しいイザナキ、イザナミ二神に対する日本政府の対策が実行され、効果の検証が行われた。その結果報告が政府よりなされた。

政府;イザナキ、イザナミ二神に対する少子高齢化対策の成果について報告いたします。初めにイザナキ神に関してでございます。
イザナキ神の産屋造りは千五百には至っていませんが、略その数値に近い完成軒数を得ることができました。ただ、イザナキ神による新築は進んだのですが、中古の空き屋軒数が増え、少子化対策としてはさらに新たな対策を加える必要があるものと認識しているところです。
次いで、イザナミ神に関してでございます。
高齢化にかかわるイザナミ神のご活動には、政府の女性の輝く社会施策にも力を得て、力強いものがあります。ただ、なにぶんにもご高齢であり、腕力はかなり回復したとはいえ、千人を縊るには持続力が今一歩と言ったところで、引き続き注視してまいる所存です。
思わぬ効果もありました。
イザナミ神の縊り力が戻ったことで、脳の血行障害による認知症が激減し、福祉にかかわる予算削減が可能となりました。いわゆるやりそこないが減った結果と思われます。
以上でございます。何かご質問は?

(2014.12)