はじめに

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2016年1月1日金曜日

猿蟹合戦 
知恵絞り真似ても見たが三本足りず
落ちも又なし謹賀新年

えー、一生懸命馬鹿バカしいお笑いを申し上げて新年のご挨拶といたします。

八「明けましておめでとうございます。御隠居も元気で新年をお迎えの御様子で」
隠「おぉ、八っぁんかい。おめでとう。早々のご挨拶、有難う。今年もよろしくお願いしますよ」
八「今年はサル年ですが、どういう年になりそうですかぃ?」
隠「そうだな。十二支ではどの年もなんか好いことが起こる謂れがあるが、どうもサル年てぇのはこれと言うのをきかんナ」
八「そりゃぁこまりましたネ。悪い年で?」
隠「そんなこたぁない。一番人間に近い頭の好い動物だし、皆がよく知っていて親しまれている」
八「サルといやぁ、昔大分の高崎山で、餌の芋をやろうとしたら、引っ掛かれそうになって尻もちをついちまいました」
隠「そりゃぁ災難だったナ」
八「係の人が飛んできて、芋を投げ捨てろ、目をそらせって怒鳴られました」
隠「怪我はなかったのかい」
八「へ!・・・リヤカーから芋を沢山ぶちまけてくれ、サルたちはそちらにワーッと行っちまいました」
隠「お前さんよりたくさんの餌に釣られてくれたってぇわけだ」
八「それにしても、凄い勢いで奪いあっていました。一匹で何本も芋を手に持ち、脇に抱え込んで、今で言うやあ爆買いの風景で」
隠「同じサルでも、日光猿軍団なんぞはよく教育されていて見事に統制が取れているよ」
八「何か言いたそうで」
隠「・・・ン? 秋葉原の爆ナントかと、渋谷のスクランブル交差点の整然とした風景」
八「たとえが悪いって怒られますヨ」
隠「そう言えば、この辺りでも、近頃はサルを見かけるよ」
八「あの方々のことですかィ」
隠「ん?・・違う、違う。人のことをサルと一緒にするのはおよし。でも、似とるナ、・・。ゴルフ場へ行ってみな、すぐ脇で何匹か一緒に歩いてる」
八「ご隠居を仲間だと思って寄ってくるんじゃぁ」
隠「そうかもナ。野生のサルが人里に下りてきている。畑を荒らされて、農家の人は迷惑しているようだ」
八「そりゃあけしからん!やっつけちまえば」
隠「そうもいかん。昔からサルは好い扱いをされていない」
八「そうですか」
隠「サル知恵だとか、サル真似だとか言うじゃあないか。あの大国でも朝三暮四などと好い話はない」
八「サルマタてエものがありました。でも麹町のサルなんざぁご隠居は大好きでしょう」
隠「そうさなぁ。落語じゃァないがおとぎ話でもサルは酷い役割をさせられている」
八「うーん!あれでしょう。猿蟹合戦。すっかり敵役だ、悪役だ」
隠「ありゃあサルが可哀そうだ。悪いことなんか何もしてない」
八「でも、蟹を騙くらかしてお握りをせしめたでしょう」
隠「なにも騙したりはしてない。どちらも納得して取り換えっこをしただけだ」
八「その後も、折角生った柿の実を一人占めして、実ったのを食べちまい、かたい奴を蟹に放り投げ、挙句の果てに・・・・」
隠「去年は柿が大豊作だった。うちへも何軒かの知り合いから柿が届けられ、毎日のように食べ続けたヨ」
八「そういやぁ、冷えたの、腹が痛いのって言ってましたネ」
隠「そんなことを言っちゃあ、くれた人に悪いヨ。軽く風邪をひいただけだ」
八「サルも風邪で?」
隠「柿てえものは大層沢山生るということだ。サルが一人占めしようとしても、もて余す。サルなんぞに採ってもらわなくても、熟して落ちてくる」
八「じゃぁ、頼んだ方が馬鹿だってこって」
隠「そうは言わんが、話に瑕疵がある」
八「柿が菓子で?」
隠「この間も尾ひれさん、・・間違った、翁長さんと言う知事さんが言っていただろう。カシてえのは間違い、欠点があるっていうことだよ」
八「うーん!この頃は変なカタカナ語をしゃべる奴が多くて困る。隠居もそう言ってましたネ」
隠「うん?・・まぁいいや」
八「蟹は頭へ来てサルをやっつけようと思った」
隠「うん」
八「知り合い、友達が集まって作戦を練った。家に戻ったサルを待ち伏せし、いろりに近づくと栗がはじけ火傷をした。アチッチッチてんで冷やそうと水瓶に行くと、隠れていた蜂が飛んできて刺されてしまった。あわてて逃げ出すと屋根から臼が落ちてきてドッスーン」
隠「は、は、ハ、ハ・・。牛フンに滑ってこけた所へ臼がドスンという話もあるが、まぁいいか」
八「見事仇をとりめでたし、めでたし」
隠「めでたくなんかない」
八「めでてぇことはない?どうして」
隠「サルが仇をとられ、やられて、大けがをしたという、やくざの出入りのような話だぞ」
八「それじゃあ拙いんで?」
隠「おとぎ話てえのは、何か心に響く、言いたいこと、伝えたいことがあるはずだヨ。それを言わんから瑕疵があると言っているんだ」
八「響くんですか。除夜の鐘はさっき鳴ってました」
隠「このおとぎ話には鐘の音が見当たらない。そこで少しばかり探してみた」
八「深読みですか?・・得意のでっち上げだな、上げてもくだらない話だ」
隠「言いたいことを言うナ」
八「それで何ですか?」
隠「先ずナぁ、蟹は友達に頼んでサルをやっつけることにした。だが世の中そうは簡単に仲間を集めることが出来るもんじゃあない」
八「成程?インターネットなんぞで集めちゃどうですか」
隠「インターネット?近頃流行りのISの手口かい?ISと同じようなことをやってたが、そんなハイカラな物じゃあない」
八「じゃぁ何ですか?」
隠「カニの力だ」
八「カニ?・・金の力と言いたいんじゃァ」
隠「何度も言わすな。カニの力だ。ISだって大方はカニの力で人集めしているそうじゃあないか」
八「やっぱり金で・・それだけじゃぁISと同じだなんて言えませんよ」
隠「栗がはじけたのと蜂が刺したのは自爆テロだヨ」
八「ハハあァ。じゃぁ臼は何で」
隠「空爆だ」
八「いったいどちらの攻撃だか訳が判らないじゃあないですか!」
隠「好いんだよ。サルが一方的に悪いのじゃあなくて、どちらかと言うとカニの方が力づくということだ。それと、最近の世界を予言していると言いたいだけなのだ」
八「ハハぁ、ここで言いたいこと伝えたいことがきましたか。好いとしましょう。ついでですから伺いますが、牛の糞は何ですか?」
隠「牛の糞?あぁあれな」
八「は、ハ・・。困ったな」
隠「煩い!黙れ」
八「黙って待とうじゃァないか」
隠「・・あれはなニオイだナ」
八「糞が臭いのは当たり前でしょう」
隠「でもナぁ牛の糞はサルにやられてしまった。サルが勝った」
八「どうして?」
隠「それを基にプロバガンダ映画がつくられた。ISが得意としているやつだ」
八「映画?」
隠「うん・・ん」
八「うん・じゃあないよ。なんと言う映画で?」
隠「糞に滑って転んだ拍子に、サルは思わず屁をこいてしまった」
八「屁?まさかヘーで落ちにしようてんで?それとも屁が響いたとでも?」
隠「違う、違う。牛の糞より猿の屁の方が臭くて、サルが勝ったんだ」
八「なんで?」
隠「出来た映画が猿の惑星!」
八「ナヌ!」
隠「サルノハクセエ!サルのは臭せぇ!だ。何遍も言わせるな」
八「それが落ちのつもりなの?落ちになっている?」
隠「なって無い?あたり前だ。サルだぞ。めったに落ちては困るではないか・・・」
八「へ、へぇ~。恐れ入りやした。おまけしておきましょう。オチツイタ好い年になりますヨに」
テケテンテンテンテン・・
(2016.1)