はじめに

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2018年1月1日月曜日

お犬様

お犬様 

一犬虚に吠え万犬これに和す
一見虚にみえ万事これを忘れ

明けましておめでとうございます。新春でございます。何といってもひたすらお目出度いことにいたします。何が目出度いか。私はこれが書ける、貴方はこれが読める。ヨタ話、ゲナゲナ話でございます。
年始のご挨拶に毎度お世話になっております八っぁんがやってきました。
八「新年で。おめでとうと言わなくちゃぁなりません」
隠「おぉ。これは、これは八五郎様。おめでとうございます。新年早々少し斜に構えてのご挨拶で、どうなすったかな?」
八「今年は戌年で、正月には隠居の戌談義でも聞いてやろうと思っていたわけです」
隠「聞いていただける?有難いことで。恐れ入ります。今年もぜひぜひよろしくお願いいたします」
八「でも気に入らないのです」
隠「気に入っていただけない?どういう訳で?」
八「ここまでのやり取り、気が付きませんか」
隠「犬のように鼻が利けば気付くかも知れんが、一向に何も臭わないな」
八「歳は採りたくないもんだ。全く!」
隠「正月から年寄りを馬鹿にするのはいかんな。いったい何事かな?」
八「隠居のセリフ、どういう訳で?までは去年と殆ど一緒のやり取りですよ」
隠「ほー!八っあん。お前さんそれを覚えている!大したものだ。見上げたものだヨ屋根屋の褌ってェやつだ」
八「古い、古い!新年らしく新しいことを言いなさいよ」
隠「そう言うけどな、きっとこれを読んでいる人も、八っあん、多分気がついちゃあいまいて。大丈夫、大丈夫。噺を続けよう」
八「いきなりのコピペで」
隠「わし一人のことではない。お前さんとの共同謀議だ」
八「共同謀議?じゃあ、お巡りさんにつかまるってぇ話で」
隠「捕まる?つかまえどころのない話をするんだから、大丈夫だ」
八「じゃあ、てんで、口直し一つ戌談義でもやらしてあげようじゃぁ・・」
隠「やらしていただけるんで?おアリガトウごぜぇます」
八「よいよい。遠慮せず申してみろ」
隠「ハハァア!」
八「こんな下ごしらえでよろしいでしょか?」
隠「ウン。いいだろう」
八「ではどうぞ!」
隠「だがな、八っあん。コピペでここまで引っ張ったのには事情がある」
八「話を引っ張るって、何方かを真似ているんですかぃ」
隠「何もかも人真似と繰り返し。謹んでお詫び申し上げ・・。何で新年早々謝らなくちゃあいけない?」
八「まぁまぁ、そう言わずに話を続けたまえ」
隠「そうしよう。と思っても、その事情ッてェのがあって、実は犬の話はなぁ」
八「ネタ切れですか・」
隠「そう、鋭い!そういうことだ」
八「昔、犬を飼っていたとか言っていたじゃありませんか。大好きな昔話はどうですかィ」
隠「犬は飼っていたけど、その話は全部喋っちまった。知っているお話も、ここほれワンワンとか、桃太郎の家来くらいなものだ」
八「犬に食いつかれたことがあるとか言っていましたよ」
隠「そうだ!それがあった!」
八「その噺にしちゃあどうですか」
隠「駄目だ。食いつかれたが、犬が歳とっていて、喰いつかれた跡は凹んでいただけで、傷の一つもつかなかった」
八「歯が無くて、噺にならない!いい出来じゃあないですか。もう落ちですかい?え・気落ちで!そう気落ちしないで頑張っておくんなさい」
隠「ワシも歳だ。心配ごとだけが・・」
八「何か気がかりでも?」
隠「今年は戌年だ」
八「おぉ。始まりか?元気出せ、元気出せ!・・・」
隠「戌という意味はなぁ、滅するということなんだそうな」
八「インギでもねぇ」
隠「インギだとか、縁起だとか言っていられりゃあ好いがナ。新月の夜陰に乗じてドンパチを始めるとか、太平洋で水爆実験をやるとか。物騒な話がとびかっておる」
八「話だけじゃあなくて、ミサイルや戦闘機、爆撃機がブッ飛んでいるじゃありませんか」
隠「そうなんだ。おまけに厭なことは、今年が戌年ということだ」
八「・・・・さっきの滅するてェやつですかい」
隠「それだけじゃあない。もう一つある。トラさんが戌年だ。歳男だからなぁ」
八「トラさん? あの柴又の?」
隠「ウンニャ。本名はンプがつく。運否天賦は時の運のンプだ」
八「あぁ、あの歳男は勢いに乗る。神輿に乗る。調子に乗る。やたらと乗る」
隠「かなりのお調子者のようだからナ」
八「もう片方のジョンさんはどうなんですか?いけない、いけない。こちらはウンが無くなっちまう。処刑されそうだ」
隠「こちらは今一つはっきりしないが、どうやら子年のようだ。鼠だヨ」
八「随分と太った鼠で。でも、犬と鼠じゃあ、大きさ、力から言ったら、勝負あったじゃあありませんか」
隠「猫ならとにかく、犬は鼠を捕まえるのが巧いとは言えん。チョロチョロされるとどうしていいか判らなくなりうろたえちまう」
八「鼠ってのは要領がいいから、ちょろちょろ動いて目くらましをかける」
隠「要領だけじゃあないぞ。鼠自身は小さくて弱いが、病原菌をもっていたりするので厄介だ」
八「困ったなぁ」
隠「困ったことだ。下手ぁするとドンパチだ。滅びの始まりだ」
八「でも、ご隠居。戌年は今に始まったわけじゃあない。戌年のたんびに滅びてたんじゃァ、命が幾つあったって足りやあしねえ。今年の戌は前のとは違うんですかぃ」
隠「なにせ、このところ犬の方は鼠の近所周りに仲間を呼び寄せて演習やら練習やら、脅しまくっているし、鼠はネズミで地べたに潜ってドカン、空に向かってドドーン」
八「ネズミ花火の一種だてェ話もありますヨ。そんなに心配はいらないんじゃァ」
隠「ネズミ花火だって倉庫に火が入って、こちらに飛び火したり、物が飛んだりして来たんじゃあかなわないヨ」
八「俺たちゃぁネズミ花火なんぞは手元にないから、線香花火で、・・。何ならお線香をあげてナンマイダー・・。お祈りするぐらいが関の山で」
隠「まぁ犬の遠吠えてェ事もあるから、吠えているだけかもしれん」
八「でも、それ負け犬のッてェのが前につくんでしょう」
隠「それを言うってぇとトラさんがむきになる心配もある。鼠の方も怖いから、噛みつくかもしれん。窮鼠猫を噛むというからな」
八「でも、それ猫でしょう。犬じゃァない」
隠「八っあん、好い事を言う。犬には噛み付けないかもしれん」
八「心配だ。ご隠居」
隠「・・・・?ウン・?」
八「さっきから、ヅーッとコタツに潜りっぱなしで。まさかシェルター代わりで?猫はこたつで丸くなる。地で行ってますヨ。猫扱いは俺たちになるんじゃァないですか」
隠「そう言われりゃぁそんな気がしないでもない」
八「早いところ炬燵から出ておくんなさい。猫には外の方が安全だ」
隠「・・・? どうして?」
八「鼠には猫入らずがいいとされています」
隠「・・・!!」
お後が宜しいようで。今年もよろしくお付き合いの程を。テケテンテンテン・・・・テン・。

(2018.1)