はじめに

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2015年10月6日火曜日

ラグビー
カンチョウの効き目たしかに南アにサモア
スコッチ惜しくものみ損ね

日本チームがラグビーワールドカップで南アを破った。スコットランドには負けたものの、サモアにも快勝した。これには本当に驚きました。驚くと同時に申し訳ない気持ちにもなりました。申し訳ない気持ちというのは、ラグビーに大層癒されたことがありながら、最近では見向きもしなかったことです。これらの試合というより、W杯が行われていたことも知りませんでした。そのくせ、勝ったことを知って、逆転サヨナラのシーンを初めとして、格好いいシーンは何度も見ました。気分の好いものです。
私が現場に足を運んで見たスポーツで二番目に多いのはラグビーです。回数は20回を超えます。国民的スポーツと言えば野球に相撲でしょう。野球は高校野球、社会人野球ではかなりの回数を球場へいっていますが、上級レベルであるプロ野球に限れば20回そこそこです。相撲に至っては本場所、地方巡業とそれぞれを1回だけです。本場所も両国あるいは蔵前国技館ではなく、愛知県体育館です。ついでに地方巡業は福江小学校の校庭でした。
野球、相撲という国民的スポーツをさておいてラグビーを数多く見ているのには理由があります。この度の南ア勝利でTVに紹介されたりして、回顧されていますが、新日鉄釜石が日本選手権7連覇をした時代がありました。その7回の内、V2~V6回の間、釜石にいました。お蔭で、いい思いが出来ました。
当時、正月休みは若干の有給休暇を加えて豊橋ですごしていました。その間にラグビー社会人大会があり、釜石はすべて勝ち進んでいました。さすがに秩父宮ラグビー場へはそれほどでもありませんが、花園ラグビー場へは結構行きました。
この界隈で日常使っていた鉄道は、もっぱら名鉄であり、時に国鉄でした。近鉄の利用というのはほとんどしませんでした。花園。この時ばかりは近鉄です。初めて近鉄に乗って、名鉄が日本一高い私鉄と言われていたことを実感しました。値段がいくらだったか記憶がありませんが、名古屋・花園間の料金から相応な時間で行くものと推測しました。かなりその時間を過ぎても花園に着きません。てっきり乗り過ごしたものと思い車掌さんに尋ねたところ、まだまだ先でした。近鉄は安いなぁと思いました。時間がかかったのは料金の差だけではなく、花園は特急が止まらず急行とか準急に分類される電車に乗ったからかもしれません。それが原因で名鉄に日本一の称号をと思ってしまったなら関係者にお詫びしなくてはなりません。その後は花園直行ではなく、鶴橋まで特急で行き、普通で戻るという経路をとる知恵もつきました。
社会人の一番と学生の一番が戦う日本選手権は、今話題の国立競技場でした。あの競技場が取り壊されると知った時は、時代が終わったなぁと寂しい気持ちにさせられました。観客数は六万人。いつも満員でした。六万人の集団の大きさを今でも思い出せます。国会前に何万人かのデモ隊が集まったという報道映像で、対比してそれがしばしば誇張であることの推定が出来ます。
私は新入社員の3年間、釜石で働きました。一緒に入社し、釜石に赴任した中に二人の男がラグビーをやっていました。当時はそこそこの強さで、強化の途上にあったようです。
V1。その釜石が日本一の座についたことを知りませんでした。二度目の釜石勤務についても、暫くは知りませんでした。たまたま週刊朝日だったと思いますがグラビアページにランニングをしている男の写真が載っていて、そこに新日鉄釜石の松尾雄治と書いてありました。えー?釜石に週刊朝日に載るほどの男がいるんだ。上司に尋ねました。お前知らないのか、ラグビーが日本一になったんだ。そのメンバーの主力が松尾雄治であり森重隆なのだ。
当時、釜石から東京へは夜行寝台列車でした。釜石を夕方出て、花巻駅で東北本線の寝台に乗り換え、上野へは早朝に着きます。上野界隈でサウナ風呂に入り、そこで朝食、仮眠をとってから本社など仕事先へ出かけるという手順です。外国へ出かける程のことはありませんが、それなりの身支度、準備をして出かける必要がありました。
V2以降は毎回国立競技場へ行きました。幸い、職務上本社への出張頻度は多く、ついでにというノリで日本選手権をみることができたのは僥倖でした。当時は、選手権は115日と決まっており、出張日時は早めに調整しておくことで何とかなったのだと思います。
当時釜石ラガーは北の鉄人と呼ばれておりました。森、松尾のように大学時代からのエリートだけでなく、地元の高卒を育成して編成していました。彼らは全員現場で仕事をしていました。今ではプロがいるようですが、当時は全員アマチュアです。私がいた製鋼工場にも一人部員がいました。現場は彼らを預かっているという感覚もありました。試合があればいなくなるし、練習も就業時間後だけとはいきません。それでも職場は彼らがいることが誇りでもあったのです。オラホウのチームになっていました。皆ラガーの過酷さを承知していました。何十メートルかを全力疾走して、その先でぶつかり押しあい奪い合い。一番過酷なスポーツだと思います。運好くなどということが結果に入り込む隙はなさそうです。究極のところで勝負がつきます。強い方が勝つ理由です。
その点野球は必要な時だけ動けばいい。サッカーは走り通しではあるが格闘の必要はない。相撲は1分を超えるとオオズモウの名がつき、休憩時間が儲けられることもある。ラグビーは走り通しでその先に格闘が待っている。時としてひと悶着あった跡に、ひっくり返って動かない奴がいる。救護の人たちが駆け付け、薬缶から水をかける。倒れていた選手は水をかけられると、手を借りることもなく起き上がる。
薬缶の水は魔法の水と言われていました。水で起き上がるのではないとも聞きました。水をかけてもらうまでの時間休んでいるのだそうです。かなり納得のいく話です。魔法の水と称しておくべきです。この度のW杯では薬缶の姿が無かったように思いますが、魔法が駄目になったのでしょうか。もう一つ変わったように思われる点があります。ゲームの展開です。少し展開が変わってきている感じがしました。私がよく見ていた頃は、ボールに対して攻撃側がハの字になって展開に備える陣形を作っていたように思います。ラグビーというとその形を思い出します。さあ攻めるぞ!という感じで力が入ったものです。今はボールに対して横に並んでいるように見えます。締りが無いようにすら思えます。何かルールが変わってそうなったのか、戦術の変化か、はたまた素人の勘違いなのでしょうか。玄人の方、ご教授賜りたいと思います。
3年ほど前に同期入社の仲間で釜石を訪ねました。街中のラーメン屋の店先で、旧知の方にお会いするという偶然もありました。被災個所や製鉄所、それと松倉グランドに出向きました。製鉄所のクラブチームとしてあった野球部、ラグビー部は今はありません。野球部に至ってはホームグランドである小佐野球場が跡形も無くなっていました。松倉グランドはラグビー部の本拠地で現存しています。
その本拠地でニュージーランドのポンソンビーというチームが来日し、テストマッチが行われました。強豪チームとの評判通り、釜石はコテンパンにやられました。世界のレベルは高いのだ。日本一でもひねられてしまう。その記憶もあり、この度のW杯での勝利が凄いことだと思えるのです。
ラグビー部は釜石シーウェーブという名の地域クラブとして存続しています。トップリーグには届いていませんが、地域では結構人気チームです。
松倉グランドには人影がありませんでした。グランドの脇に建物があり、戸を開いたので中を覗いてみました。トレーニングマシンで何人かの人が汗を流していました。南方、ポリネシア系の人達という感じです。迷惑そうな眼差しを感じたので、戸を閉めようとしたところ、奥から人が出てきました。
「すみません。昔V7の頃釜石にいた者です。このグランドには結構来ていて懐かしかったもので」
出てきた人はチームドクターだと言いました。そう言えば昔もチームドクターがいて、遠征にも帯同していました。野球部にはいなかったと思います。やはりラグビーは過酷なスポーツなのです。先生にチーム状況などの話を聞きました。トレーニングをしていたのはプロの方で外国人でした。V7時代はラグビーと言えばアマチュアリズムの権化でしたが、今ではプロが認められ、チームの中では混在しているそうです。
そうだ、確かラグビーボールがあるはずだ。ありました。森重隆、松尾雄治のサイン入りのボールです。「新日鉄釜石ラグビー部 第16回日本選手権優勝」と書いてあります。調べてみたところ第16回というのは、V1の時です。記憶では名古屋への転勤に際して、サインのご両人のいずれかからもらった物です。V1記念で作ったものの在庫品だったのでしょうか。
南ア&サモア戦の勝利で、懐かしい出来事を多く思い出させてもらいました。有難うございました。

ラグビーとは何の関係もありませんが、厳しい世界戦に関する小噺を一つ。

法治国家

中国の報道官が記者から質問を受けていた。
記者「習主席が国連で女性の権利会合を行いましたがどういうことでしょうか?」
報道官「わが国が女性の権利を守り育てる国だからです」
記者「ヒラリー氏が中国は女性権利運動家の大量逮捕、拘留を行っている。その国の主席が女性権利会合とは、恥知らずだと非難しました。如何でしょうか」
報道官「わが国は法治国家であり、法に反したものを法に則って処罰しているだけです。恥知らずなどとは言いがかりです」
記者「もう一件お尋ねします。法皇と習主席の演説は如何でしょうか?」
報道官「どちらも堂々とし、立派だったと思います」
記者「あの、・・聴衆の数がだいぶ違ったと思いますが、その点は如何で?」
報道官「わが国は法治国家であり、その法は国内にのみ適用されます。国連で動員をかけたり、気に入らないからといって、逮捕などして妨害するなどということはいたしません。最大の自制をしています」

(2014.10)