はじめに

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2018年9月6日木曜日

働き方


働き方



過労死など及びもつかぬ働きで

生き延びついでにまだ生きる



「働かなく」なってもう二十年近くになる。くたばって「動かなく」なるまでにあと何年か、何ヶ月かはよく判らない。気になるのは「動かなく」なる前に「動けなく」なるだろうと予測されることだ。なろうことなら「動けなく」なると「動かなく」なるの間が極小であってほしいものだ。

「過労死」とか「過労」から来る心労で自死にいたる人が多発してたりして、何とかしなくてはと「働き方改革」なる法案が出された。「働き方改革」には全く無関係の立場であるが、少しばかり気になる点がある。



月の残業時間が100時間を越えると健康に関わる影響が出る。酷くなると発病、果ては過労死にいたる。時には過労死が自死であることも結構あるようだ。

「働かなく」なって時間がたっているので実感がなくなっているが、働き過ぎてあんばいが悪くなったというような記憶は無い。100時間の残業というのは、週40時間の労働を基準にして、休日労働なしとすると、毎日5時間弱の残業だ。毎日朝の8時から夜の9時くらいまで働く勘定になる。毎日では、これはきついと感じる。毎日の晩飯が10時過ぎは勘弁してほしい。ただ、嘗ては週休1日だったから、週48時間労働が基本だった。これだと毎日2時間半残業することになる。夜6時半までだ。これだと感覚的には耐えられそうな感じがしないでもない。過労死という言葉には繋がらない様な気もする。

残業が100時間を超すのが常態化しているような会社は、ブラック何とかと言われているくらいだから、100時間という時間は表現的数字で、実際にはもっと厳しい労働を強いていたのではなかろうか。100と言う数字は多いという表現で使っているのではないか。法律で使う以上厳密でなくてはと思うが、この法律の背景にある調査の基本数字が実にいい加減なものだとバレている。裁量労働制の対象者の比較でのサンプル数の少なさ、調査方法のいい加減さを考えると、100時間は多いという意味、百花繚乱、百聞は一見、百の説教、百薬の長等と同意語として使っている。歌心のあるエリート官僚の自慢の表現であろう。

この法案で初めて知って驚いたことがある。

建設業と自動車運送業それに医師には時間外労働の限度時間がないという。

私が一時お給金を頂いていた会社は建設業だった。そのときはバブルの最盛期で人手不足の最中であった。多くの労務担当者が全国規模で人集めに奔走していた。36協定に直接関わって手続きをした覚えはないが、頻繁に見聞きした身近な法律条文だ。それからすると、建設業が埒外というのが理解できない。尤も、私が携わっていた業務は建設ではなく、製造、生産関係だから埒内だったのかもしれない。

建設業界と並んで自動車運送業が限度時間なしとはいったいどういうことか。この二つの業界は労働環境上でブラックというイメージが強く感じられる。とりわけ運送業は、過労運転による事故が多発した実績を踏まえると、規制がないというのは信じられない。この世界では、居眠り、勘違い、果ては病気発作など長時間労働に伴うトラブルが目に見えている。そこが制限なしとは、過重労働のなんたるかの基本を無視している。事故を起こしたバス会社はきついお取り調べを受けている。この辺りの脈略はどうなっているのか。

医者の不養生と言う言葉があるが、人の命、健康に携わる医師当人は適当で好いということらしい。手術など長時間に及ぶものがある。人の命を預かる職業の人が、法律的保護を受けられないというのは如何なものか。開業医は自営業なので労働時間規制から外れるのは当然である。しかし、開業医の診療時間のなんと長いことか。一枚や二枚は持っているでしょうから、一度手元の診察券を見ていただきたい。私の手元にある診察券の1枚は診療時間がAM7301200 PM330700となっている。週に幾日か飛び飛びで半ドンがあるが、週休1日だ。おまけに1200700では絶対に終わらない。診察終了時刻が過ぎても待合室に何人かいることがほとんどだ。実体験しているから間違いない。この開業医の勤務状況が基本になっているのかもしれないが、大病院、公的病院の医師の勤務時間が無制限というのは好いのかなぁと思う。医師は体と心の仕様が他の人と全く違っているのかもしれない。このたびの法律でも建設業と運送業は猶予期間を設けて、規制適用をするとなっているが、医師はこれから検討会を開くことになっている。これから検討ということは官僚用語では何もしないと言うことのようだ。可哀相というか・・・。それでも裏口を使っても、点数の水増しを図ってでも、医師を目指すないしは目指させる人もいるのだから可哀相ではないのかもしれない。

研究開発職なるものは規制を外すという。研究開発職なるものがどういう定義か分からないが、今や最先端を行く職業であるIT,AI関係者なのだろうか。そうだとするといささか合点がいかないでもない。実際の業務内容は知らないが、PCに向かって一人ひたすらの形で取り組む姿が思い浮かぶ。わざわざ会社などの施設に赴かなくても出来る仕事だと管理が難しかろう。

古びた頭で思い浮かぶ研究開発職は、大学など機関で、研究開発に取り組んでいる人達である。このところ日本の研究論文の引用件数が大幅に少なくなっているという。引用されないと言うことは、世界で、類似研究に携わっている人達が日本の研究開発を振り向かなくなっている、関心を持とうとしないということのようだ。研究開発に携わる人達は、仕事を他人に強制されることも少ないだろうし、時間を気にすることもないだろう。もし命に関わるほど頑張ってしまっても、よしとするであろう。それを好いことにして規制から外しているなどとは言い掛かりかもしれない。

日本の科学を維持振興するためには国が時間規制等しない方がいい。国がやるべきは、この人達の待遇をもっとよくし、研究予算をつけることだ。二番でなくて一番でなくてはいけない。一つ気になるのは、研究開発に携わる人の周囲を固めている人々がいることだ。その人達まで一括りにすると拙いことになる。



有給休暇の消化を企業に義務づけている。賛成の上で、提案がある。

この義務、企業にだけ課すのではなく、労働者にも課すべきだ。年次有給休暇の取得が未達の場合、日数分の給与を罰金として召し上げる。召し上げられては困る。現役の頃毎年年休はかなりの日数流していた。少し長く有給休暇を取ると周囲の人に負荷がかかったり、業務に遅延が生ずることを気にしてのことだ。義務化されればこの遠慮は取り除かれる。

ブラジルで働いていたことがある。有給休暇の取得は義務だった。年間1ヶ月だった。それも一括取得である。下位の職種の希望者のみに二分割が認められていた。義務は私も同じであった。3年ほどいて3回、義務を果たすために日本へ帰ることができた。一括取得が義務付けられているのには理由がある。不正防止対策である。年に一度、他人が業務を行うことで、何らかの異常を見つける手法、対策としている。不正防止である。性悪説である。このところいろいろ物議を醸している高級官僚の方々、何やら協会幹部に長期有給休暇義務を課しては如何かと思う。



裁量労働制とか高度プロフェッショナル制というのはどうも意味が分からない。煎じ詰めれば、固定給で好きなように働いて、又は働かせて好いということなのか。現役の頃これに似た働き方をしていた。管理職になると好きなように働いて好いとはいわれないが、好きなように働かしてもいい?制度だった。要するに残業手当なしだった。本人の同意なども必要ではない。労働基準法の遵守については結構うるさい会社だった。こういうことで法律違反をすることはないと思う。当時から、週に40時間を越えて働いても残業手当なしで法律違反でなかった。さすれば単に社内規定ですむことではないか。今更、殊更に法律化しなくても好いのではないのではと思う次第だ。何か違っているのだろうか。



「働き方改革」で提案がある。

少子高齢化に伴い、大幅に労働人口が減少している。対策として、憲法に定める「勤労の義務」を法律でもって明確化する。現在年金生活している老人にも一定の就業義務を課す。病気、障害などで就業できない者には「就業免除手帳」を交付する。必要ならば、職安が仕事の斡旋を行う。就業した者には時間当り一定の税金を免除する。失業率が一定以上になった地域には適用しない。

提案理由;私は長年勤労の義務を果たさず憲法違反をしている。別にお縄になったり罰金を取られるわけではないから、裁判所的には違憲状態と言うべきかもしれない。近所の高齢者のほとんどは、何らかの仕事をしている。結構楽しそうだ。私を合憲状態にするには、強制力が働かないと無理だ。多分、いやいやながらと働き出せば、楽しんで仕事をやりそうな気がするのだ。極めて独りよがりな提案である。「動かなく」なる直前に「働く」などは口先だけだ。口減らしの対象になってしまうかもしれない。



では小噺を一つ



くしゃみ3回・・



残業が100時間を越えた研究開発者が法律に基づいて医師の診断を受けた。

医師「各種検査の結果、一部異常値が検出されました。来月からは、決して100時間を超えないようにしてください。ゴホン、ガハン・・・」

研究「わかりました。先生、何か具合が悪そうですが?」

医師「あぁ、ゴホン、ガバゴボゲベ・・。貴方たち研究開発者は法律で守られていますが、私たち医者には何の規制もありません。今月も軽く100時間を越えて残業しております」

研究「先ほどからしんどそうですが、大丈夫ですか。国は何にもしないのですか?」

医師「何もしません。なんせ放置国家ですから。ゴホ・・」

研究「具合が悪くなったり、死にでもしてもイシャ料も取れない」

医師「ゴホン、ガバゴボゲベ。貴方のダジャレで寒気がしてきた。ハクション、ハクション、・・・ハクション!」

研究「あ、先生。先生は風邪を引いているだけです。風邪薬を3錠飲んでお休み下さい」 (2018.9)