はじめに

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2015年8月6日木曜日

狂歌明日か
ソ・ソ・ソクラテスか
ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか
ユ・ユ・ユーロかドラクマか 皆悩んで金算段

 ギリシャが借りたお金を返せない。困ったことだ。騒ぎを見聞きしていて、何故かしら昔聴いた歌が思い浮かんだ。
「♪♪・ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか・・・・♫♫」
野坂昭如が歌っていたウィスキーのコマーシャルソングである。ソクラテス・プラトンがギリシャ人であることからの連想だ。安易で、あまり豊かな感性からの連想とはいえない。おまけに、誤った認識をしていた。歌っている野坂昭如なる人物についてである。彼は立派な文筆業者で、余技というか、遊び半分でコマーシャルソングを歌っているとばかり思っていた。たまたま見つけた彼の作品を読んで驚いた。「いじわる読本」という作品だ。「いじわる」というのは悪いことではない。いじわるをする場合、される側とする側に愛情というか、ある種の許し合いの心が通っている。イジメとは違う。ところがこの作品には人に対する愛情のかけらも見当たらない。悪口雑言の限りを尽くしている。汚物を直視させられているような気分にさせられた。こんな作品を書いている人間を、私は好きになれない。その男が歌った歌を思い出したのは聊か忸怩たるものがあるが、自分の脈絡形成がそうなっているのだからとあきらめる外無い。
「♪♪・ソ・ソ・ソクラテスか・・・・」の続きは「ニ・ニ・ニーチェかサルトルか、皆悩んで大きくなった♫♫」である。あまり豊かな連想ではないと思ったが、そうでもない。この歌はこの度のギリシャ騒動に係わっている。ソクラテス、プラトンはギリシャ人。ニーチェはドイツ人。サルトルはフランス人だ。登場人物の国籍に脈絡を感じる。結構その関連について繋がりをもっているではないか。好い連想だ。そう思い直した。
残念ながら、この歌に出てくる偉人たちの名前は知っているが、何をなさったか、なんなのかを理解していない。理解してないという言い方は恰好付けだ。判らないのだ。多少なりとも業績内容を理解して知っているギリシャ人を挙げるとピタゴラスとアルキメデスがいる。定理、原理の大先生である。
ピタゴラスについてはこの頃お世話になっている。
何年か前のことである。「♪♪・ソ・ソ・ソクラテスかプラトンか♫♫」を思い浮かべた動機よりもっと弱い動機だったと思うが、ピタゴラスの定理を思い浮かべてしまった。さてと、あれはどうやって証明するんだっけ。直角三角形を描き、考えた。この問題が試験に出たら、時間切れで×を頂く位の時間がかかった。時間はかかったが、解くことはできた。以来、気が向くとこの証明をやるようにしている。年に一度くらいの頻度になる。このところはスラスラと解ける。思考力のテストのつもりだが、記憶力のテストになってしまっている節もある。どちらにしろ、ボケを自ら否定する手立てのつもりである。尤も証明をしようとすることを忘れてしまうようになったら、それ相応の状態に至ったことになる。ギリシャ人・ソクラテスを知っていることは有難いことだ。
現代のギリシャ人で名前を知っている人は殆どいない。知っているのはオナシス位なものだ。皆さんも同じだろうと思うが、オナシスを知っているのではない。ジャックリーヌ絡みでJ・F・Kの後釜として、名前を知っているだけだ。それも、いい年こいた助平爺が金に物言わせて・・・・。申し訳ないが、あまりいい感じは持っていない。
この度、久しぶりにギリシャ人の名前を知るところとなった。チプラス首相だ。
ギリシャは二千億円余りの借金が返せなくなってしまった。日本でも似たような金額で揉めていた。新国立競技場に要するお金だ。ギリシャの場合は各種通貨レートだけでなく、世界の株価にまで影響を与えた。それより大きな金額でも、日本のそれは国際問題どころか、国際的話題にすらなっていない。日本の世界に対する影響力の無さがなせることなのか?一人、森元総理だけが国際的な問題だ、三千や四千億のハシタ金で日本は恥をかくことになる、と仰っていた。ハシタ金より少ない額で世界の株価が動いているのも不思議なことだ。
この件についても、私は認識不足だった。二千億円の向こうに四十兆円に上る大借金がギリシャにはあったのだ。さすがは元総理。同じ森でも器が違う。四十兆円を思えば、三千億、四千億などはハシタ金だ。その四十兆円すらハシタ金かもしれない。ギリシャの借金は、底なしの取り扱いだが、思えば日本の国家予算では、毎年のように四十兆円の国債を発行している。その借金している額ではないか。合計四十兆と毎年四十兆ではとんでもない差だ。それでも日本や関連国で大騒ぎになっていない。気にしているという程度では言い過ぎだろうか。気にしている程度というのであれば、四十兆もハシタ金の分類に属するのだろう。お隣の大国では株価維持対策として何日か前に百兆円突っ込んだという話もある。四十兆などはやはりハシタ金に属するというのが世界水準なのだ。
国民投票でギリシャはEUの条件を拒否してしまった。
「耐乏生活をしろとEUは言ってきているが、貴方達は耐えられますか?Noと言ってくれれば悪い様にはいたしません」
チプラスは国民に問うた。僅差と言われていたのが、ふたを開けてみれば大差でNoとなった。大阪の住民投票と似たようなことをやった訳だが、結果は提案者の主張が絶対的に支持された。大阪では敗北した。
あの国の産業は何があるのだろうか。思い浮かぶのは観光産業位なものである。もう一つ。オナシス絡みで海運業があるのだろうと思う。海運王オナシスと謳われ、我々庶民の知るところとなった。かなり昔のことだ。今でも栄えているのだろうか。それにしてもギリシャは四十兆円もの借金を何に使っているのだろうか。観光事業にそれほどいるのか。全部飲み食いに使っていれば、返せる筈が無い。
私自身は借金というものに縁が無い。相続対策として借金をして太陽光発電を大々的にやっている人を知っている。どうして相続対策になるのか判らないが、借金をする能力があり、発電による収入からその借金が返済できる見込みがあると言っている。相続税対策というのはさて置いても、事業という面からは前向きの借金だ。借金は活かされ、返済される。私が借金に縁が無いのは活かす術を何も持たないからだ。借りようとも思わないし、誰も貸してくれない。
ギリシャには期待される話もあるらしい。国内に金鉱が見つかった。エーゲ海に石油の埋蔵がかなりある。チプラスが流したデマかもしれない。噂話か真実か。真実としても金鉱を掘ろうものなら、遺跡にぶつかって掘り進めないのではなかろうか。エーゲ海に櫓を組んだら景観が損なわれ、観光客が来なくなりはしないか。好い話か悪い話か判らない。
事の成り行きを見ていて認識を修正しなくてはなるまいと思った。チプラスは大政治家だ。お詫びして訂正させて頂く必要がある。
彼は国民大衆に迎合してEUに逆らうことで点数を稼ぎ、首相の地位を得た軽佻ポピュリスト政治家だと思っていた。EU案に反対しようという方向に仕向けて、国民投票を行った。ここら辺りは何をしようとしているのか判らなかった。判らないというより無責任だと思った。反対票が圧倒的多数となった。これでケツをまくってさあ殺せの騒ぎになるものと思っていたら、なんとEU案を飲む交渉を始めた。国民に反対を表明させておいて、その反対案を飲む交渉を間髪入れずに始めたのだ。国民の多数の意思を向けさせた方向とは逆の方向に、国の舵を切る。それを敢えて公にしておいてだ。並の政治家の出来ることではない。多数の意思はさておいて、彼自身が選択すべき道へ進み始めたのだ。それが国益にかなうという信念が無ければ、こんなことは出来ない。私利私欲が挟まる余地は無い。ピタゴラスの定理証明には補助線が不可欠だ。真似して解くのは私にでも出来る。これを考え出すのは偉大で無いと絶対に出来ない。国民投票は補助線だ。チプラスは人が考えもしない所、方向に補助線を引いたのだ。行きつく結果による証明が肝心だが、取りあえずはピタゴラス級の大物、大政治家だ。
安倍総理大臣は森さんの言うところのハシタ金の始末に動いた。国民の80%が反対する新国立競技場の建設案を潰した。国民の多数に従った。見方によっては所謂民主的判断だ。ここまで来たのに側から言わせれば、大衆迎合だ。チプラスとは対極をなす。同じ二千億、四十兆でもギリシャと日本では軽重に差があるごとく、首相においても軽重の差が出ているのか。安倍は軽くチプラスは重い。この比較は酷い。軽薄だ。安倍首相も安保法案では支持率の低下を気にすることなく推進しているではないか。国民の多数意見に反する方向が、この国の、国民のためになる。そういう判断だ。国立競技場は補助線だ。チプラスほど重くはないかもしれないが、それほど軽いものではない。安倍さんも芯は強く重いのだ。
重い軽いは体重ではない。内面的なものだ。内面がいかに充実しているか。ここは是非、アルキメデスの出番だ。

 では小噺を一つ。

国際協力

ギリシャではこの度の経済危機に関して受諾した緊縮策の実行に鑑み、彼らの神々に加護を依頼した。
オリンポスの神々が一堂に集い協議をした。なかなかいい案が無く、国際的な協力を求めるべしということになった。遠い極東の国、日本からの協力受け入れを決めた。直ちに人材が派遣され、オリンポスの神々の前で挨拶をした。

日神「皆さんの愛する国が経済的に困窮し、その立て直し策の実行に苦慮されているということで、協力を依頼され遥々日本よりやってまいりました。日本の神の一人でございます。一番の問題点は、要求されている緊縮策、耐乏生活の実行であります。このことにつきましては、私は長年にわたって困窮者、貧困生活に携わってまいりました。蓄積した技術、ノウハウは必ずや、皆さまのお役にたてるものと確信しております」
日本の神は自信満々な態度で話を続けた。

日神「あ・・・。申し遅れました。私の名前は貧乏神でございます。・さて・・・」

(2015.8)