はじめに

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2019年12月6日金曜日

ツタンカーメンのエンドウ豆


ツタンカーメンのエンドウ豆



豌豆の面倒を見て30

メンデルほどには芽も出ない

 

11月の初旬になると毎年種まきをします。ツタンカーメンのエンドウ豆です。30年前から栽培しています。

ツタンカーメンのエンドウ豆というのは、その出自によるもので、ツタンカーメン印の豆などというものではありません。

エジプト、ツタンカーメンの墓は考古学者ハワード・カーターによって発掘され、多くの出土品がありました。その遺構の中から出てきた豆として、ツタンカーメンのエンドウ豆と称されています。黄泉の世界の食料品の一つのようです。

この種子を手に入れたのは30年ほど前のことです。Tさんという人から頂きました。曰く因縁故事来歴を述べ、興味があるならと数粒を別けてもらいました。

その種子をプランターに蒔きベランダで育てました。白い花の中央が紫の綺麗な花が咲き、やがて実がなりました。成長に従い鞘に紫色が被さりました。普通のエンドウ豆との違いが歴然としました。鞘は紫色ですが、実は普通のエンドウ豆と同じ薄緑色です。豆ご飯を炊きました。炊き上がったご飯は、少しえこひいきしても“そう言えば赤いかなぁ”程度のものですが、炊飯器に何分か保持すると見事に色変わりをしました。小豆の赤飯には及びませんが、綺麗な薄い赤紫色です。じゃぁ小豆の赤飯で好いじゃあないか。ご尤もです。しかしながら、薄緑色の豆から赤紫が染み出すのは、何故かしら不思議な感じがします。神秘です。これぞツタンカーメンと思わせるところです。

以来、30年間、11月初旬に種を蒔き、明くる5月に収穫をしてきました。

今年も112日に「2018収穫」と書いてある封筒から種を取り出し蒔きました。蒔きながら、種の数が少ないのが気になりましたが、準備していた場所には行き渡ったのでよしとしました。夕方、種の保管場所を覗いたところ、似たような封筒を見つけました。「2019収穫」と書いてあります。エンドウ豆は年を越しての収穫なので、去年種を蒔き、今年収穫するのです。今年蒔くべき種は今年の収穫です。間違いは素直に正さなくてはいけません。蒔いた「2018」は取り敢えずそのままとし「2019収穫」分を植木鉢に蒔きました。ついでに「2016」分とかなり「黒みがかった」やつ、それと「Sさん」と書かれた種も蒔きました。

「ツタン・・」を30年前から栽培していると書きましたが、ブラジルにいた3~4年間は中断しています。中断の後に保管してあった種を蒔きましたが、発芽しませんでした。そこで一緒にTさんから種をもらって栽培を続けているSさんにお願いして分けてもらいました。絶滅した佐渡の朱鷺を復活させた手法と同じです。その時の残りが「Sさん」と書かれた封筒に残っていたのです。

図らずも、この度は種子の発芽テストをやることとなりました。学術的でなく、単に発芽を調べるだけですが気分はメンデルです。

一般的に種屋さんで売っているものは袋に発芽率と有効期限が印刷されています。時間経過とともに種子はその使命を全うできなくなるのが定めのようです。

Sさん」・・略20年物、「2016」・・3年物「2018」・・1年物「黒みがかった」・・320年の間物です。それと当年物です。

一時中断中の種が発芽しなかったのは経年劣化によることも考えられますが、保管方法によるのかもしれません。この豆はポリ袋に入れ、戸棚に放り込んでありました。入れ物の通気性が悪く窒息死したというようなこともあるのでは。はたまた、高温、あるいは低温により生命力を奪われたのか。

「ツタンカーメン」の場合、ピラミッドという恒温、恒湿状態が種子の生存に適していたのかもしれません。外気や太陽光など電磁波を受けなかったことも幸いだった節もありそうです。

さはさりながら、「ツタンカーメン」など一笑に付される作り話だ。″嘘だんべぇ″これが通説であり、一番真相に近いのでしょう。

しかし、大賀ハスの例もあります。大賀ハスは2千年前の種子。「ツタンカーメン」は3千年前で千年も古いではないか。いやいや、千年しか違わない。経年劣化の比較に適さない大年数です。

たまたま、大賀ハスは大賀博士という植物学博士の手で復活することができました。「ツタンカーメン」のカーターさんは考古学者です。植物学に造詣がないので、単に遺品として持ち出し、流出した可能性は、・・・・・。おまけに、「ツタンカーメン」では、王家の呪いにより発掘関係者の多くが変死しています。アメン神は聖なる墓地を荒らした人に呪いを降りかけることができる能力を持つ神様です。そこに供えられた物には三千年はおろか、永遠の命が宿っているのでは。

そういうことにして、今年も「ツタンカーメン」を育むことといたします。メンデルにあやかって、テストに供したエンドウ豆がメガデルことを・・。



(蛇足)

「エンドウ豆」ですが、「エンドウ」は漢字で書くと「豌豆」です。「エンドウ豆」は「豌豆豆」です。「万世橋」は交通案内標識のローマ字表記を「Manseibashi Bridge」と変えたそうです。「豌豆豆」は世の流れに沿ったものかもしれません。



それでは小噺を一つ。



三途の渡しにて

 

三途の渡しに長い行列ができていた。受付で何事か言い争い、トボトボと戻ってくる人が何人かいた。レポーターがそのうちの一人をつかまえて話を聞いた。

R「ずいぶん長い列ができていますが・・、お尋ねしてよろしいでしょうか?」

亡「どうぞ」

R「あなたはここへ何しに来ましたか?」

亡「何しに?!もちろん死んで、あの世とやらへ行くためです」

R「受付で揉めている人が大勢いるようですね?」

亡「はい」

R「いつもこうですか?」

亡「いつも?!私は初めて死にましたから、判りません。前世のテレビでレポーターがしばしばくだらない質問をしていましたが、あなたでしたか?」

R「失礼しました。・・で、こちらへ戻られたのは?」

亡「私は長い年金生活で、めいっぱい長生きしました。貯めた二千万円を、渡し賃を残して、綺麗さっぱり使い切りました。これを見てください」

そう言って、亡者は残高がゼロになった貯金通帳とチラシを見せた。チラシには次のようなお知らせが書かれていた。



「お知らせ  

古来、三途の川の渡し賃は六文と定められておりました。しかしながら、この度、消費税が十%となり、経営努力によるだけでは価格維持が困難となりました。つきましては渡し賃を七文に改定させていただきます。亡者各位にはご理解、ご了承の上お支払いをお願いいたします。

令和元年十月吉日 渡し守                     」



201912