米朝噺
風の吹きよとお日様次第
着たり脱いだり失調症
地球温暖化などと申しますが、今年は早くから暖かくなったと思っていましたら、急に冷えたりして困ったものです。一度片付けたコタツを出したのはいいのですが、仕舞うに仕舞えずこたつの脇で隠居が居眠りをしておりました。
八「こんちわ!」
隠「・・・・・」
八「こんちわ!こたつの外で居眠りですかい」
隠「・・おぉ、八っあんかい。まぁ、こたつに入んな・・・」
八「すっかり暖かいのに、こたつはないでしょう。お目覚めで?」
隠「そうだな。このところ暖かいやら寒いやら、訳が判らんよ!」
八「判らないと言やあ、こないだまで核だのミサイルだのと騒いでいたお隣が、すっかり仲良くなって結構ですね。米朝の会談が行われるとかで」
隠「うん」
八「太陽の所為だとか?」
隠「太陽政策のことかい?・・・・・」
八「そう!マントの脱がせっこで、北風が吹くとマントの襟を縮め、太陽が照らすと暖かくなって脱ぐという西洋のお話どおりだということで、・・」
隠「世の中暖かいに越したことはない」
八「手のひらだけじゃあなくて、心に太陽を!・・・」
隠「偉い!流石、八っあん・・・・・」
八「へへへへ・・。太陽政策のおかげで平和に・・」
隠「・・・・・褒めといてすまんけど、北風と太陽の話には続きがるってぇことを知っているかい?」
八「続き?」
隠「そう。負けた北風が悔しい!てんで、再試合を申し込んだ」
八「再試合?」
隠「そう。マントで負けたが、帽子なら負けないぞ、ってんで」
八「それで、どうなった?」
隠「今度は太陽が先攻で、旅人を照らし続けた。旅人は眩しさと熱中症対策で帽子をとろうなんぞは思いもしなかった」
八「後攻は北風だ!大体がこの手の試合は後攻が有利だ」
隠「そう。八っあんもすっかり知恵がついたな」
八「へへ、それほどでも」
隠「マントと違い帽子にはボタンもないし、鍔があって風当たりが強い」
八「帽子はどこかへ吹っ飛んだ!ボウシ対策がなってない。それとも帽子だけにシャッポを脱いだか」
隠「座布団一枚!お話、お話。それも西洋の古いイソップのお話。北風、太陽、どっちが正しいなんてことはないという説話だよ」
八「するってぇと、またぞろヤバッチクなるって言うんで?」
隠「どうかなぁ?なんせあの国は北だし元祖のイルソンさんは人民の太陽と崇められている。北風も太陽もあるから、どちらが勝っても自分の勝ちだ」
八「トランプさんには勝ち目なしですか?」
隠「自分は強いと思い込んでるから、そうはいかない」
八「ドンパチですか?」
隠「どうかなぁ。北風と太陽の話にはまだ続きがある」
八「へぇ。続きですか?」
隠「そう。隠蔽、紛失、ねつ造、忖度に損得。何でもありだ」
八「何ですか、それ?やけくそですか」
隠「うんにゃ。くそなんかじゃあない。しょんべんだ」
八「しょんべん?」
隠「そう。八っあん、これは米朝の話だ」
八「南北、六カ国などと言いますが、米朝で?」
隠「そう。北風に帽子を吹っ飛ばされた太陽は再々戦を申し入れた」
八「風の話で?」
隠「だから、続きがあると言っただろう」
八「・・・・へえ・・」
隠「マントと帽子で一勝一敗。今度はパンツで行こう」
八「パンツ?そりゃあずるいよ。裸にならなきゃパンツは脱げない。太陽が勝つに決まってる」
隠「そりゃあ太陽は考えたさ。謀略という奴だな」
八「北風は断ったでしょう」
隠「ううん。受けて立った」
八「無謀だ。ははぁん。帽子は吹っ飛ばされているからムボウなことを」
隠「そう。ムボウ息災といって、病気や怪我の心配がない」
八「それで勝負の方は?」
隠「太陽が照りつけると旅人は外套どころか、着ていたものを脱ぎ始め、パンツ一丁の姿になったナ」
八「そらみろ、太陽の勝ちだ」
隠「なんで?パンツ一丁になったが、脱いだわけじゃあない」
八「恥ずかしがり屋なんだ」
隠「それなりの節度を持っているんだよ」
八「それにしちゃあ、お互い酷い言葉で罵り合っているヨ」
隠「今度は北風の番だ。旅人は驚き慌てて持っているものを着こんだ」
八「パンツは無事だナ」
隠「気温変動に旅人はすっかりおかしくなってしまった」
八「弱っちまったんだ」
隠「自律神経失調症になっちまったのか、寒さで震え上がったのか、気分悪そうにモソモソし始めた」
八「・・・?・・?」
隠「お漏らしした」
八「漏らした?それで、パンツを履き替えるために脱いだって言うんで?」
隠「お見事!八っあん」
八「それで北風の勝ちだってことですかい?ひでえ話だ」
隠「まあな。でも、その後パンツを日に干していたから、太陽の勝ちかな?・」
八「どちらにしてもウソっぽい」
隠「すまん、すまん。ウソじゃあない、クソだ」
八「パンツがらみで、今度はクソなの?さっきやけくそかと聞いたら、しょんべんだって言ったじゃあないか」
隠「米朝会談をするに当り、金がないので誰か出してくれって言ってるらしい」
八「悪い冗談だ。いくら貧乏していても、そんなことよく言えたもので」
隠「昔、ザレ歌があった。台詞を覚えている」
八「昔?」
隠「ソウ・・・・。カネがないので・・・手で拭いて・・」
八「ウン?カミがないので手で拭いて・・じゃあ?ミッチャンミチミチ・で」
隠「・・・・もったいないので嘗めちゃった」
八「嘗めちゃった!少し世間、うんにゃ世界を嘗めていませんか。馬鹿馬鹿しい。話はそれでおしまいで?」
隠「うんにゃ、まだ話は続くよ」
八「どういう具合に?終わりなき世の目出度さだ。聞こうじゃぁないか」
隠「米朝のことだ。なくなった米朝」
八「うん?やるって言ってるんじゃあ。なくなってなんかいませんよ。それでミチミチウンコ・・やるんでしょう?」
隠「やる?何を?米朝と言えば、わしにすれば桂米朝だよ。米朝の十八番ははてなの茶碗だ」
八「うん?隠居の言う米朝は、亡くなったあの方で?」
隠「・・まあな。通称茶金という目利きが安茶碗をしげしげと見ていたナ」
八「はてなの茶碗!知ってます!その茶碗に値がついたが、安物の欠け茶碗とばれた。でも、話が面白いってんで殿様が箱書きをして、更に値がついた」
隠「よく知っているじゃぁないか」
八「それで?」
隠「こちらの米朝も、茶碗から水漏れするんじゃぁってんで、見守っている」
八「その通り」
隠「そこで、東洋平和のためならばと、我が国が名品と箱書きをすることとなった」
八「うん?何ですって?箱書きを?!ウソだろう」
隠「ソウ・・・・。ウソ」
八「ウソなの?一体どっちなんで?」
隠「なんせ我が国は蚊帳の外だから、わしにも一向に判らんのじゃ」
・・おあとがよろしくなりますように。テケテンテンテン・・・・。
(2018.6)
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